• カトリック大阪高松大司教区 社会活動センター・シナピス

シナピス事務局こぼれ話(2024年11月)

  • 2024年10月31日

シナピスのビスカルド篤子さんの連載エッセイです。

10月2日 行列のできるシナピス歯科ルームの誕生

歯は痛みがあれば歯科に行くしかありません。自立を禁じられている仮放免の人にとって歯の治療をどうするかは深刻な問題です。

シナピスニュース9月号のこの欄で「入管で7本も歯を抜かれて顎がへしゃげた人」のお話を書いたところ、「診ましょう」と、ある歯科医さんが声をかけてくださいました。

歯科医の新庄文明(ふみあき)さんと妻の幸子(さちこ)さんです。幸子さんは、社会運動面でも芸術面でも広くご活躍される方で、数年ぶりに彼女の笑顔に再会できた私は懐かしさと嬉しさでいっぱいになりました。

 新庄先生はシナピスに到着されると、「椅子とコップと水とタオルがあれば診ますよ」と仰って、持参された道具を取り出し手際よく次々に仮放免の人たちの歯を診察してゆかれました。今日診てもらった人の中には、長年放置しすぎて歯茎の奥まで蝕まれてしまい、痛みすら失っているケースもありました。歯科医がそばまで来て診てくださらなければ、この先もずっと放置したままだったことでしょう。

 新庄先生はこれから定期的にシナピスへ通ってくださることになりました。治療の過程で費用のかかるものは、本人たちが最低限度の経費を先生にお支払いする約束をしました。

10月11日 15分で見つかる通訳探しネットワーク

日本語も英語も通じない中国人難民夫妻が到着しました。釜ヶ崎で野宿していた夫婦を見た同国人の難民申請者たちが手を差し伸べ、夫婦は心ある日本人に一時宿泊施設で保護してもらい、シナピスを案内されたということでした。

しかし夫妻は玉造の活動センターへ来たとはいえ、全く意思疎通ができません。これでは「こんにちは。ほんじゃサヨウナラ」と手を振るしかありません。そこで私は電話をかけまくって中国語でコミュニケーションの取れる人を探しました。15分後、なみはや教会から愛徳カルメル会のシスター熱田に繋がりました。中国語を使えるシスター熱田は、ちょうど外出前でしたが「30分だけなら」と快諾してくださり、私はすぐにパソコンを取り出しました。

シスター熱田は心得ておられ、オンラインで繋がると、挨拶もそこそこに通訳を始めてくださいました。通訳含めて30分ですから、正味15分で取り急ぎ聴くべき要点をつかまなければなりません。きっとシスター熱田も「時間がないから要点だけ」と夫婦に促してくださったのでは、と推測できるほど、中国人夫妻とのやりとりはテキパキと進みました。

お見事、シスター熱田!…も、そうですが、ひょっとすると、中国人夫妻にとっては、気色ばんでつんのめって喋りまくる、そばのアツコと名乗る女が怖くて、テキパキ返答せざるを得ないだけだったかもね。

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