• カトリック大阪高松大司教区 社会活動センター・シナピス

シナピス事務局こぼれ話(2024年9月)

シナピス ビスカルド篤子

8 月19 日 虫歯になったら歯を抜く歯医者

難民申請者のハメドさん(仮名)を歯科へ連れて行きました。
ハメドさんは歯が悪く、うまく食べ物を咀嚼できず固い物が食べられません。また前歯が上下ともすり減って前歯の隙間から物がこぼれたりするので、彼は人と食事をしないようにしています。もう四六時中「歯」で頭がいっぱいで、ハメドさんは人前で笑うことができず、だんだん人目を避けて暮らすようになりました。私たちは、無料低額診療事業をやっている病院に頼み、彼の虫歯を治療してもらいましたが、矯正などは適用外ですので支援は打ち切られました。
この日、私はハメドさんを歯科大病院へ連れて行き、無保険ならどれくらいお金がかかるか試算してもらいました。歯科医が「奥歯が殆どありませんね」と言うと「入管、抜いた」とハメドさん。長崎県の大村入管センターに収容されていた時に歯痛を訴えると、治療せずに歯を抜かれてしまったのだそうです。「6 本、7 本覚えてない。いっぱい。」
今の日本でそんな荒療治をする医者がいるでしょうか。小指の先を怪我したら治療せずに小指ごと切断するようなものでしょう。一生大事に使わないといけない歯を抜いてしまうとは。奥歯を7 本も抜かれたハメドさんは顎が段々へしゃげるようになってきたといいます。私はハメドさんの口の中を見て哀しくなり、改めて憤りを覚えました。歯を返したってんか。
歯科医はハメドさんの背景事情を知り、できるだけお金をかけずに、本人の最も気にする前歯の「見た目」を良くする策を練ってくれました。提案された額ならハメドさんが生活費を切り詰めれば何とか分割で支払えそうです。行って良かったと思いました。
紛争や自然災害で避難生活を余儀なくされる人びとの中にも歯痛に悩む人がきっといるでしょう。いえ、兵士として前線で戦う人も、です。神経に触る虫歯の痛さにどう耐えているのだろうか…。

7 月□日、8 月△日×日 シナピスシャトルカー、出動~!!

裁判所に病院に法律事務所にと、連日支援活動で走り回る私たちに強力な助っ人たちが現れました。
運転免許を持つ難民さんたちです。
ある日の私のスケジュールは、病院と法務局と銀行廻りでした。電車を乗り継げば一日仕事でした。
でもその日は、難民さんが運転して送迎してくれたお陰で格段にお金と時間を節約できたのです。
難民さんたちの運転する送迎車。これは重宝します。送迎車のお陰で最近は高齢者や体の不自由な人もボランティアに来ていただけるようになり、センターに出入りする人の層に厚みが出てきました。
ホテルの送迎車に連なって森ノ宮駅で人を待つシナピスシャトルカーなんてかっこいいではありませんか。皆さんもぜひご利用ください。ボランティアに限らずシナピスに御用のある方、森ノ宮駅からの道のりが不安でしたら一度お電話ください。
ただし!その日のその時間に、たまたま空いている車があって、たまたま免許を持つ難民さんがいれば、に限りますけれど。

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