今年で12回目となる 『いのちの光3・15フクシマ~フクシマが背負ってきたもの伝えつづけるもの~』への参加と現地を視察するツアーに、 2名の参加者と松浦謙センター長が行ってきました。
『いのちの光3・15フクシマ』 は呼びかけます。(原発事故について、 福島だけに限定せず幅広い社会問題として捉えるため、「フクシマ」と表記します)
3月15日は、東京電力福島第一原子力発電所が3度目の爆発を起こし、 フクシマへと運命を変えた日です。 第一原発から約25kmの距離にある、カトリック原町教会でのミサによる祈りと現地の人々の声を聴き、 「いのち」のあり方について共に考え、 メッセージを発信していきます。
政府が2月に改定した「エネルギー基本計画」では、原発の「依存度を低減する」との従来の表現が削除され、 「最大限活用する」と明記されました。 推進派は「画期的だ」と喜んでいるようです。
原発事故の教訓は? いのちと暮らしを守る道と原発は両立するのでしょうか?
今回のツアーが、もう一度、皆さんと考え始めるきっかけになればと願っています。
[ 3/14(晴)]
12:30~ カリタス南相馬(地域住民への寄り添い、復興支援の他、ボランティアの受入れ、現地案内、地域の情報発信など行う)で説明を受けた後、スタッフの宇根さんの案内で被災地域の視察
➡ 南相馬市の原町区、小高区、また浪江町、双葉町、大熊町をまわる。 中間貯蔵施設や太陽光発電の現場など ➡ 東京電力廃炉資料館 ➡ 東日本大震災・原子力災害伝承館
夜 根本さん(カリタス南相馬所長、災害派遣ナースとして現地に入る)のお話とディスカッション
[ 3/15(雨)]
9:00 希望の牧場(被爆した牛200頭以上の飼育を続けている)
➡ 大平山霊園 ➡ 震災遺構請戸小学校
12:20 おれたちの伝承館・もやい展
13:40〜16:00 いのちの光3・15フクシマ
「アートを通じて伝える原発事故」 中筋純さん(写真家・おれたちの伝承館館長)
ミサ 幸田和生東京教区名誉補佐司教(原町・いわき教会担当)
[ 3/16(雨)]
9:30 相馬市伝承鎮魂記念館・慰霊碑➡中浜小学校(宮城県亘理郡山元町)
15:30〜17:00 いのちの光3・15 フクシマ
「内部被爆の治療をライフワークとする医師が語る被爆の健康被害の真実」 西尾正道さん(北海道がんセンター名誉院長)
(画像は、双葉郡大熊町の看板)
参加者の感想①
同志社大学 学生 中井 ルネ
毎年3月11日近くになるとニュースで東日本大震災(以下3・11とします)の特集が流れ、「もう〇年経つんだなぁ」と振り返る自分がいました。
今回の視察に参加したきっかけは、3・11は過ぎ去った歴史のようで、振り返る機会が少なすぎると気づいたからです。 私は3・11について無知に近い状態でした。
お恥ずかしい話ですが、視察に行くと決めてから初めて、「原発」と「東電」が関係していることを知りました。無知であることに焦りを感じた私は、この機会を絶対に逃してはいけないと感じ、視察に行く決断をしました。
3・11は「巨大地震」、「大津波」、「原発事故」の複合災害(トリプル災害)と呼ばれています。2011.3.11の夕方、日が暮れて捜索活動を中断し、翌日の早朝に再開する予定でした。 しかし、原発事故の危険から捜索を中止して町民は避難しなければならない状態になりました。
もし、「原発」が無かったら予定通り捜索活動を再開させ、救うことができた命はたくさんあったことでしょう。
複合災害がゆえの惨劇と感じた私は、南海トラフ巨大地震が発生した時、同じことが起こるのではと心配します。 関西にも原子力発電所があります。 活断層の活動が活発で、火山の噴火も予想されることを知り、恐怖心に駆られると同時に3・11は人ごとではないと実感します。もうこれ以上、原発事故で苦しむ人を増やしたくない、3・11の教訓を無駄にしたくないという気持ちで胸がいっぱいです。
3日間という短い期間でしたが、私にとって初めての福島訪問でした。食べ物は本当に新鮮で頂く度にほっぺが落ちてしまいそうでした。 地元のスーパーでは、地域の方の温かさに触れ、 笑顔を拝見し、ほっこりした反面、いまだに14年前と変わらない街並みも一部見られ、まだまだ国全体の最重要課題として考えなければならない問題がたくさん残っていると感じました。
こんなにも歓迎していただいたからには、なんとかして恩返ししたい。
今の私ができることは、今回、五感で感じたあらゆる経験、 3・11から得た教訓を一人でも多くの人に伝え、特に原発に関する意識を関西でも高めることです。 まずは身の回りの方に伝えることから始めたいと考え、 出身高校でのプレゼンテーションを予定しています。
最後になりましたが、今回お世話になったカリタス南相馬の方々、福島県の魅力に気づく機会をくださり、本当にありがとうございました。 福島県、大好きです。
(画像は、仙台空港の津波到達高さと、請戸小学校の印刷室)
参加者の感想②
垂水教会 野村 季里
今回のツアーでは「いのちの光3・15フクシマ」への参加を中心に現地の震災遺構、伝承館、慰霊碑を訪れました。 「いのちの光3・15フクシマ」にはかねてより参加したいと思っていましたので、今回、喜んで参加させていただくことにしました。
私にとって今回は4度目の現地訪問となりますが、見学者の多い伝承館の周りの風景は来るたびに美しくなっています。公園やグランドゴルフ場が整備され、昨年11月には無かった建物もありました。それとは対照的に、人があまり来ないところは、倒壊した神社や店舗、家屋が14年前のまま残っています。
伝承館はとても立派な建物で映像も展示物も豊富ですが、それだけを見ていては現在進行形の帰還困難区域のことまでは伝わらないのではないか、単なる昔話と化してしまうのではないかと、毎回モヤモヤとした気持ちになります。
翌日は震災遺構請戸小学校を見学後、南相馬市の小高区へ向かいました。脱原発都市宣言をしている南相馬市は太陽光と風力で90%以上の電力を賄っているそうです。
山を切り開き設置された広大なメガソーラーパネルは良くも悪くも圧巻です。そしてその寿命がくる30年後には膨大なゴミとなることを考えると、エネルギー問題は一筋縄ではいかないと考えさせられます。
将来に大きな課題を残すうしろめたさをいつも感じてし まいます。
原町教会へ戻る前、「おれたちの伝承館」にも立ち寄りました。 手作りの小さな伝承館ですが、地域の方々の思い、作家の方々の強いメッセージを感じる伝承館でした。 講師の中筋さんは、東日本大震災が起こった時は東京におられたそうですが、福島第一原発の爆発をテレビで見た時、チェルノービリでの豊富な取材経験から、これはとんでもないことが起こったと直感的に感じられたそうです。
「おれたちの伝承館」は常設展示のほかにいろいろな企画展をされるそうなので何度でも訪れたいと思いました。
翌日は仙台での講演会に参加。 講師は放射線治療がご専門の西尾医師でしたが、帰りの飛行機の時間が迫り最後まで聞くことができず残念でした。
今回、大学生の中井さんと参加でき、とても学ぶことの多い充実した時間となりました。 特に若い方への伝え方について考えるきっかけになりました。今後のスタディーツアーを企画する際は若い方も参加できるような工夫をしてみたいと考えています。
(画像は、福島第一原発の遠景とフレコンバッグ、原子力災害伝承館の展示)