• カトリック大阪高松大司教区 社会活動センター・シナピス

ガザの人たちの受難は終わっていません!

シナピス運営委員 西口信幸

第2段階に入るはずの3月、恒久停戦や撤退に応じる気がないイスラエルは、ガザ全体を廃墟にした上で戦国時代の城攻めのように、完全に封鎖し、ガザ全体を飢餓収容所にしました。
3月18日、ついに空爆と再侵攻を開始、20回の強制避難命令を出して狭い海岸部に200万人の人を追い込んでいます。この1ヶ月、私たちは逃げ惑う養魚場の中の魚のように殺されていく人々を見続けています。北部に加えて、南部全体をKill Zone (指定殺害区域)とする「モラグ回廊」を建設し、すでに7割の土地が占領されました。

ガザ市民は狭い沿岸部「アル・マワシ」に追い込まれて、人口密度4万人/㎢という超過密の強制収容所に閉じ込められようとしています。トランプ関税の追い風を受けて、自発的な移住を迫るトランプのリビエラ計画が現実のものとなってきました。

主食の小麦粉、燃料が枯渇、4月1日には製パン店がすべて閉鎖に追い込まれました。国連機関が保有していた備蓄食料も底をつきついに195万人のうち多くが飢餓状態に入り、ほとんどの妊婦と赤ちゃんは栄養不足で、餓死の恐れにあります。6万人以上の子供が急性栄養失調で緊急治療が必要です。

この瓦礫の中で、逃げ惑うお母さんから毎日100人近い赤ちゃんが産まれていることを想像して見てください。ガザは飢えているのではありません。イスラエルがガザを絶滅させるために組織的に飢えさせているのです。

3月18日から200回の爆撃がありました。避難先のハーンユニスやアル・マワシも空爆され、最後に残ったアル・アハリ病院も爆撃され、無差別(意図的な住民)殺戮が繰り返されて毎日50人以上の人が殺され続けています。33回の空爆で殺されたのは女性と子どものみでした。

5万1千人以上の死者数、2万人の孤児、10万人をこえる障害者の報告など、各種機関から様々な人道被害が報じられていますが、私たちはこの数字に麻痺してきていないでしょうか。この2年間、毎日伝えられているのは、一つひとつの生命、人生の、物語です。その一つひとつの物語に接することに、正直疲れてきました。しかしながらガザではその日常を、今も、そして希望を捨てないように懸命に生きておられます。目を背け、忘れてはいけないことを肝に命じたいと思います。

3月18日にイスラエルが戦争再開したのは、ネタニエフ政権の持続のためギリギリの日程でした。
3月末までに予算案を通さなければ内閣は総辞職でした。停戦で離脱した極右のベングウィルとスモトリッチの要求は奪い続けることです。パレスチナの土地がイスラエルの領土になるまで住民の殺戮、侵略は続きます。加えてトランプ大統領の出現によって、人権侵害となる住民の国外追放も公然と語られていることを忘れてはなりません。(同じことが西岸でも始まっています)

この事実を把握しつつ、沈黙し、伝えない国際社会とメディアはジェノサイドにおいて同罪です。

◆停戦合意のゆくえ ―― 4月14日以降の話

期限付きの停戦が妥結されようとしていた矢先にハマスが到底飲めないであろう、イスラエルの追加提案が出ます。アメリカによる「戦争終結」のための真剣な協議の保障を条件に、「ハマスの非武装化」を求めるものでした。当初から第2段階に入らないこと、停戦と引き換えに西岸の侵略が了承され、ガザの完全封鎖と空爆の再開も事前承認していたアメリカの戦争終結は「無条件降伏」であり、武装解除は白旗を上げることに他なりません。ガザ住民を他国に移住させるか、狭い強制収容所に閉じ込め、ガザの土地をアメリカの所有にすることです。イスラエルの占領支配を終えて民族自決権を行使できるパレスチナの国家承認に至るものでは全くありません。民族浄化の中を77年間、耐え抜いてきたガザ市民が到底認めることができないことをじゅうぶん知った上での、ハマスへの、そしてガザ市民への最後通牒なのです。飲めない盃を差し出され、ハマスは最後の竹槍特攻隊を結成する準備をしているとも伝えられています。悲しい結末が待っているのでしょうか。

「瓦礫の地獄」とトランプが言った土地を、77年間いのちをかけて守り抜き、1月28日の停戦時に勝利とともに「大帰還」したガザの人々の魂は今、消え去ろうとしています。

◆民主主義の危機

イスラエルは米トランプ政権のサポートを受け、世界中の人々が見る中で、開き直りとも言える虐殺、破壊を続けています。人権、自由を謳ってきた欧州諸国も懸念を表明するだけで動こうとしません。ジャーナリストの殺害、国連機関の機能停止も重なり、報道もされない状況で、トランプへの忖度とも思えるような動きの停滞が見られます。「国家の利益が市民の人権に優先する」どこかで聞いたような(改正入管法の時の)議論ですが、今まで遠慮がちに語られてきた「国益あっての人権」がトランプの出現によって、憚れることなく堂々と当たり前のことになっていきそうな世界情勢です。

◆解決の糸口はないのでしょうか

一つは、「パレスチナの国家承認」です。民族自決権を保障することでパレスチナの占領、入植、侵略を違法化することです。イスラエル建国後すぐに決議された国連総会決議194の実現に他なりません。すでに146カ国が国家承認しており、非承認は欧米と日本、韓国、オーストラリアのみです。フランスは重い腰を上げて6月の承認に向けて動き出しました。結局アメリカの拒否権が全てを決めますが、民主主義の崩壊の危機にある中、西洋社会の本気度が試されています。

もう一つは、遅すぎとも言えるでしょうが、改めて「非暴力・不服従」ではないかと思います。
ハマスは「イスラエルがパレスチナ国土から撤退すれば自らを解体する」とも言っていますが、遅きに失することがないことを祈ります。オスロ合意の再来となるかも知れませんが、「武器は武器を正当化する」のです。石のインティファーダは戦車を正当化し、ロケット弾が2000ポンド爆弾を呼んだ歴史的事実に立ち返る必要があります。(同様に、核抑止力などあり得ないと思います。)

教皇フランシスコは最後まで弱い立場の人に寄り添い、力ある人の制止を乗り越えて、声を発してこられました。大きな恵みを頂いた私たちにとって最も大切なことは、市民一人ひとりが声を上げること、ではないでしょうか。公然と行われているジェノサイド、民族粛清を見て見ないふりをしないことです。いくつかの動きを紹介します。良かったらのぞいて見てください。

◆「ガザの恒久的停戦と、パレスチナの和平を求める」共同声明への賛同署名 <<緊急>>

日本のパレスチナ支援団体が、パレスチナの人々の生命と人権が守られ、ガザの恒久的停戦とパレスチナの平和の実現に向けて、日本政府が国際社会に対して外交努力するよう強く求めて、賛同を募り、政府関係者へ提出します。<<5月15日(ナクバの日)まで>>

シナピスは団体として賛同しましたが、一人でも多くの声を政府に届けるため、賛同される人は個人署名して下さるようお願いします。

・声明の賛同にはこちらから署名いただけます。
https://docs.google.com/forms/d/e/1FAIpQLSeLCjJyNYDPBDlpSpMz9mZmPeQ1qd5NIaILR6MfHGRBQDosZg/viewform
また、先の停戦後にメッセージを頂いたパレスチナ農業開発センター(UAWC)
代表のフアッドさんからも賛同を呼びかけるメッセージが届いています。
・メッセージ全文: https://altertrade.jp/wp/wp-content/uploads/2025/04/444171025271d52ac913498b67335923.pdf
◆日本から、私たちのパレスチナ連帯行動
ひとりでもできる、さまざまな連帯の活動が紹介されています。
https://docs.google.com/document/d/1IUVPD02DGo5GPPM6ZU2WB0FYES4eGAaXZio07hq07hc/edit#heading=h.fgkuwzptng79
◆BDS(ボイコット、投資の引き上げ、制裁)
日本におけるBDSガイドライン|BDS Japan Bulletin
https://note.com/bdsjapan/n/n9fef3f7e00a4

◆「日本政府はイスラエル関連企業への投資撤退を」 わたしたちの年金がイスラエルに投資?

日本政府はこれまでイスラエルによるパレスチナへの入植に関して国際法違反だとする立場をとり続けてきたにもかかわらず、現在のガザの虐殺に対して何のアクションも取っていません。

また年金がイスラエルの国際法違反に加担する企業に投資されていることに対して厚労省は「投資先の判断は運用受託企業が適切に判断している」「イスラエルへの投資は現時点でESG(環境・社会・ガバナンス)に反する投資ではない」としています。しかしイスラエルへの投資は国際法違反を放置するだけでなく、加担することになります。

経済的利益が期待できれば、資金が虐殺に使われようとも構わないという政府の姿勢が残念でなりません。

*教皇フランシスコは

教皇フランシスコは、亡くなる直前までガザの人たちを気遣い、声を出し続けておられました。

『ガザから非常に深刻で痛ましいニュースが届き続けています。非武装の民間人が爆撃や銃撃の被害に遭っています。これはテロです。民間人の犠牲者は『巻き添え被害』ではありません。

彼らは、名字や姓を持つ男女であり、命を落としたのです。彼らは孤児となり、未来を奪われた子どもたちです。彼らは飢え、渇き、寒さに苦しみ、あるいは爆発物の威力によって身体を切断された人々です。私たちが彼ら一人一人の目を見て、名前を呼び、彼らについて少しでも知ることができれば、戦争の本質がわかるでしょう。

この地球上のすべての人々の尊厳を冒涜する、計り知れない悲劇、「無益な虐殺」に他なりません。』

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