• カトリック大阪高松大司教区 社会活動センター・シナピス

「見えない手錠」をはずさねば

シナピス運営委員 宮内 陽子

狭山事件の再審を求めていた石川一雄さんが3月11日に亡くなりました。
石川さんは1963年、被差別部落への差別偏見による見込み捜査で逮捕、一審で死刑判決、二審で無期懲役を言い渡されるも、50年近く獄中で、そして1994年仮釈放後も無実を訴え、再審を請求して闘ってきました。


石川さんの無念、ご遺族や支援者の方々の心中を思うと言葉もありません。
以前、狭山現地研修で石川さんが強要されて「自白」したとおりの経路を歩き、このルートでは犯行は絶対に不可能だと実感しました。


また焼失前の石川さんの家で、被害者のものとされる万年筆が三度目の捜索で「発見」された低い鴨居の穴に手を入れてみて、日本の優秀な警察がそれまで発見できなかった筈がない、この「証拠」は捏造であり、石川さんは無罪だと確信しました。
以後微力ですが署名活動や学習会などに協力してきました。


石川さんは「全国の支援者の皆さま方にお願いばかりして大変申し訳ない気持ちで一杯です」と語っていました。申し訳ないのは私たちの方です。部落に対する差別偏見をいまだなくせず、重い再審の扉を開けられず、見えない手錠をはずしてさしあげることができないまま、石川さんを旅立たせてしまいました。この社会を変えていくのは私たちの責務です。


部落出身の友人は「石川一雄さんの生きる姿勢、『なんとしても生き抜き冤罪を晴らす』とのメッセージに、当事者としての生き方を学ばせていただきました。その思いをしっかり受けとめたい。石川さんの冤罪を晴らすため、これからもささやかですが活動を続けていきたいです」と語られ、「再審法改正を求める国会請願署名」活動に取り組まれています。


石川さんの逝去により、妻の早智子さんが第4次再審請求を始められるとのことです。これまでの第3次再審請求は、カトリックを含む多くの宗教者も自らの人権課題として取り組んできました。第4次再審開始、再審法の改正に向けた世論喚起のため、私も努力を続けたいと思っています。

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