• カトリック大阪高松大司教区 社会活動センター・シナピス

ジェノサイド、民族浄化、大虐殺といってもいい事態(社会活動神戸センター 木谷公士郎さん)

シナピスニュース 2024年3月号より転載

この巻頭言を書いている2月15日現在、パレスチナ・ガザ地区南端ラファに対してイスラエル軍は苛烈な空爆を行い、地上侵攻が目前に迫っているという状況になっています。

 ガザ地区全体の面積は365平方キロ、この近辺でいえば大阪市と堺市を足したくらいの広さになりますが、そこに200万人の人たちが暮らしていました。

その南端のラファの面積は33平方キロ、同じ南端ということでいえば、堺市南区(40平方キロ)よりも少し狭いくらい、そこに130万人から140万人の人たちが避難してきています。イスラエル軍の攻撃によりガザ地区全体は文字通り瓦礫の山となってしまっており、ラファ以外にはどこにも逃げ場がない状態です。

人道支援の窓口ともなっていたラファ自体が包囲・攻撃されることにより、最低限の支援物資の供給も困難となり、ガザ地区は既に空前の人道危機にさらされており、この上地上侵攻ともなれば、どれほどの被害が生じるのか、それをどのように表現すればよいのか、最悪の上に最悪が重なるような悲劇的事態が生じるのは想像にかたくありません。

 ラファで医療活動に携わる医師は13日、自身のSNSで「爆撃を受けたり、今いる場所が壊されたりしたときに、私たちが誰であるかが分かるように、子どもたちや家族の手首と足に名前を書きました。けれどもこんなことは意味がないかもしれません」とその厳しい状況を記し、さらに続けて「私は生き延びていますが、心の中ではそうではありません、毎秒生き抜くこの苦しみが早く終わることを願っています。毎夜泣いています。日々、状況は厳しくなるばかりです」と痛切な思いを発しています。

すでに国際司法裁判所は、1月26日ガザ地区の状況を「壊滅的な人道的状況」にあるとし、イスラエルに対してジェノサイド的活動となる軍事行動を停止するよう命じています。

これまでも、そして現在においても、イスラエルの最大のうしろだてとなっているアメリカ・バイデン大統領ですらイスラエルの作戦は「行き過ぎ」だと明言し、聞く耳を持たぬネタニヤフ首相への苛立ちをつのらせていると報じられています。

テキスト ボックス: 1日本政府を含め国際社会は一致して重大な懸念を表明しており、2月14日にはフランス・マクロン大統領がネタニヤフ首相に直接電話し、ラファへの地上侵攻に「断固反対する」旨を伝え、ただちに作戦の中止と人道支援への協力を求めたと報じられました。

ジェノサイド、民族浄化、大虐殺といってもいい事態が目前に迫るなかで、戦後国際秩序を支えている国際法、「法の支配」の概念が、自制心を失った暴力に対しては全く無力であるようにみえます。

胸が痛み焦燥感にかられる、そのような思いは多の人たちに共有されているのではないでしょうか。しかしそれでも「自由、民主主義、基本的人権の尊重、法の支配といった普遍的な価値を擁護し、共存共栄の国際社会」(「国家安全保障戦略」より)を希求するという立場をあきらめるわけにはいきません。

「いずれの国家も、自国のことのみに専念して他国を無視してはならないのであって、政治道徳の法則は、普遍的なものであり、この法則に従うことは、自国の主権を維持し、他国と対等関係に立とうとする各国の責務であると信じる」と書かれた憲法前文をもつ国の国民のひとりとして、せめて関心を失わず、声をあげ続けていきたいと思います。

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