シナピスニュース 2024年8月号より転載
わたしがアメリカのカトリック大学で開かれた研修会に出席した時のことでした。たまたま隣に一人の中国人の女性が座っていました。わたしが日本人であることを知った彼女はわたしと暫く口を聞こうとしませんでした。戦争で自分の父親を日本兵によって殺されたのです。わたしは改めて戦争の傷が今も残っていることを感じました。大変重い気持ちでした。
研修会の最終日にミサがありました。ミサが終わったあと、彼女はわたしに近づいてきて言いました「過去を変えることはできません。けれど、わたしはゆるす心を持とうと思います。互いに和解し、前を向いて一緒に新しい未来を築いていきましょう」
心に感動を覚えました。今日のこのことを忘れないようにしよう。そして平和な世界の実現に向けて地道に努力を続けよう、と改めて思いました。
沖縄平和記念公園の広場に、「平和の火」というモニュメントがあります。円形の台座には東シナ海とアジアの国々の地図が描かれ、中心が沖縄になっています。そこに円錐形の塔があり、そこから水が溢れ流れて波の輪が周りに広がっていました。ここから平和が始まるように、という願いが込められていると感じました。
平和は神様からの賜物です。マザーテレサは「わたしはクレヨン。神様がそれで絵を描きます」と言われました。わたしたちも「平和の道具」になれれば幸いです。平和はまずわたしたちの一番身近なところから始まります。それはちょうど池に小石を投じたら、波の輪が広がっていくようです。
広島在住の在日韓国人2世で被ばく者の方が、平和の集いでご自身の体験を語られた時に言われました。「どうしたら世界が平和になるでしょうか?平和は互いに優しくすること。人を大切にして関わることです」と。わたしが今、置かれた場所で人と人との間に平和を実現することが世界の平和につながっていくのです。
共に祈ること、特にミサは、わたしたちに知恵と力と勇気をもたらす尽きない源泉です。キリストに結ばれて、真の平和を実現させることができるように祈ろうではありませんか。