• カトリック大阪高松大司教区 社会活動センター・シナピス

シナピス事務局こぼれ話(2024年5月)

シナピス ビスカルド篤子

社会活動センター・シナピスは人が交わる場所です。

毎日ここで誰かが笑い、悲しみ、時には泣いたり怒ったりしています。そんなシナピスの日常風景を綴ってみることにしました。

3月〇日 政治家の裏金問題に怒りの涙

フィリピンにいる妻を呼び寄せる書類準備のため、N さんが事務局に来ました。コロナ禍もあ
ってN さんは何年も妻に会えず、またその間に大病を患ってしまったため生活状況が一変し、彼
は生活保護を受ける身となりました。N さんは何度も妻を呼び寄せようとしましたが「生活保護
受給者」であることが理由で、妻のビザ認定許可が下りないのです。
「貧乏人は妻と住んだらあかんのんか。妻が日本で働いてくれたら生活保護も受けんですむが
な」とN さん。色々話すうち、話は国会議員の裏金問題に及びました。「あの裏金てなんでっし
ゃ?わしら信じて投票してきたのに、裏金て。ほんで貧乏人は家族とも住めへんのんか。わし悔
して」とN さんは泣き出しました。政治は私たちの生活に直結している。N さんの涙に、私は政
治家の裏金問題に冷めた目で心も動かさなかった自分を恥じました。

3月22 日 六甲学院の生徒たち、難民に出会う

春休みを利用して六甲学院のカトリック研究会の中高生たちがシナピスを訪れました。余談で
すが、カトリックを研究する人のうちカトリック信者はいないそうです。
この日、私は難民申請者のルイスさん(仮名)を紹介しました。生徒たちは食い入るようにル
イスさんの証言に耳を傾け、次々に質問を浴びせました。生徒たちの真剣な目と直球の質問や意
見にルイスさんも熱が入りました。こどもたちの柔軟な頭と元気な声に、私もルイスさんも活力
をもらいました。若者に出会うたび日本の将来は明るいと確信します。

3月△日 ミスター泥棒来たる

泥棒が白昼堂々と正面から入ってきました。
シナピスの入り口カウンターの棚には米や乾麺、レトルト食品などの救援物資が置いてあり、
いつでも誰でも気軽に持っていけるようにしています。彼はそれを知っていました。
その日、彼は抜き足でしゃがみつつシナピスに入ると、黙ってカウンター下の救援物資を袋に詰め込み始めました。
私はカウンター越しに彼を覗き込み「ちょと!挨拶もなしに入ってきて黙って取ったら、そりゃ泥棒でしょうが」と声をかけました。
ミスター泥棒は顔をあげて「あ、私、泥棒ですか」、「はい、泥棒です」
ミスター泥棒は盗む行為をやめて、私の同意のもと、私の目の前で米一袋、乾麺一袋とマスク一箱を持って去っていきました。
地元警察署のお巡りさんからひとこと。「事務所に杈(さすまた)一本置いておくことをお勧めします。何なら杈(さすまた)の使い方講習会、やりますよ」

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